てのひらの楽園

 白銀の世界を、三頭立てのそりが行く。
 鈴の音を響かせて、向かうは彼方にそびえる古代の都市。
「風が出てきましたね」
 毛皮の帽子をぐっと深く被り直し、手綱を握る村長。どこか楽しげな横顔を、冷たい風が撫でていく。
 荒野を吹き抜ける風に舞い踊る雪。それはまるで、雪の精霊達がソリを相手に気まぐれな踊りを披露しているかのようだ。
「見えてきましたよ!」
 村長の声に、それまで荷物と同化していた毛皮の塊がぴくりと動く。
「もうじきですよ、アイシャ」
 揺れるソリの中、必死に荷物を押さえ込んでいるカイトが歓声を上げれば、毛皮の塊からひょこっと顔が出てきて、少しだけ笑った、ように見えた。

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