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【2】 |
気付くと、目の前に緑色の双眸があった。吸い込まれそうな深緑の瞳。まるで宝石みたいにキラキラと、こっちを凝視している。 咄嗟に起き上がろうとして、オレは酷い頭痛に悲鳴をあげそうになった。ぐっとこらえることには成功したが、また地面に逆戻りだ。 ん?ここはどこなんだ。しかも、この目の前で心配そうにこっちを見てやがるガキは一体……? 「あの……大丈夫ですか?」 ガキが口を開いた。まだ声変わりをしていない少年の声。しかし、口調はずっと大人びてやがる。 「まだ動かない方がいいです。解毒はしましたけど、熱が引いてませんし」 なるほど、手を額に当てるとじっとり熱い。しかも全身だるい。しかし、オレを苦しめ続けていた右ふくらはぎの痛みはぐっと薄くなっていた。 「……お前が?」 口を開くと、唇ががさがさしていてうまくしゃべる事が出来なかった。声も随分枯れちまってる。 「はい。勝手だとは思いましたけど、あのままじゃ命に関わると思ったので……」 なんでも、オレが刺されたのはヘビイバラモドキとかいう、毒性の強い植物のトゲだったらしい。早めに手当てをしなければ命を落としかねないと聞かされて、オレは血の気が引く思いだった。 「そっか……。じゃあお前はオレの命の恩人って訳だな。ありがとよ」 ガキといえども命の恩人。お礼はきちんと言わなきゃな。そう言うと、ガキは照れくさそうに薄茶色の髪を掻いた。 「そんな、困っている人を助けるのは当たり前です。命の恩人だなんて……」 おーお。なんとお優しい事で。やっぱり、育ちがいいんだろうな。オレが逆の立場だったら、助けてやったんだから金!くらい言うところだ。しかし、こんなガキがなんで、こんな森の中にいるんだ? 頭痛を引き起こさないように気をつけながら、辺りを見回す。木々の切れ間から見える空は、まだまだ真っ暗だ。そう長い時間寝込んでたわけじゃないらしい。 少し離れたところに小さな焚き火がある。こいつが付けたんだろう。オレの体にかけられている毛布もこいつの持ち物だ。しかも軽くて上質の毛布ときた。オレがいつも寝床で使ってる奴より上質だぜ、まったく。 「お前、この森に住んでる訳じゃない、よな?」 オレの言葉に、ガキはこっくりと頷いた。そりゃそうだろう。こいつの耳は森人のように細長くない。オレと同じ、人間の子供だ。 「一人で旅してる訳じゃないよな?」 ガキは再び頷いた。しかし、表情が暗い。 なんだかオレは嫌な予感がした。 助かった、オレはついてる、と思ったが、もしかしたら落とし穴が……。 「あの……僕、迷子なんです」 困った顔で言うガキに、オレは思わず頭を抱えてしまった。 ああ、やっぱり……。人生、そう上手くはいかないって事か……。 |
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