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 一週間。何事もなく日々が流れ、三人は到着した定期船に乗って北大陸アイシャスを目指した。途中、この北海を荒らし回る海賊に出くわしたりしたが、なんとかかわして北大陸アイシャスの西、自由都市メイルに着いたのが、船出から一週間後。グロッキーなライカをなんとか船から降ろし、三人はとりあえずメイルに宿を取り、翌日北大陸の最北端である『北の果て半島』を目指して出発した。
 メイルからだと一旦街道を東に向かい、ライラ国を通っていくことになる。その途中には魔術士の塔『北の塔』もあり、サミュエルの本来の目的地はここだった。
 ルース神官の行う『知識の旅』は、見聞を広めるのともう一つ、写本の作成が目的である。魔術士の集う『塔』には昔の魔術書や歴史書がたくさんある。それを写させてもらうのだ。
 サミュエルは先に半島へ行こうと言ったが、ライカはちょっと北の塔に寄りたいと言った。理由は言わなかったが、大体見当のついていたサミュエルは承諾した。
 ちょうどライラ国までは乗合馬車が出ており、料金三分の二で途中の北の塔へ降ろしてもらった。
 北の塔は石造りの、十階建ての塔だ。もう建造されて数百年は経っているはずだが、魔術による強化のため風化したりはしていない。
 サミュエルが塔の魔術士にルース神殿からの書状を渡し、ついでに事情があると説明して先に北の果てへ向かうことを告げている間に、ライカは塔の七賢人に目通りを願っていた。ルファス神殿からの書状で目通りが叶い、塔の上に登っていた。
 その頃、サミュエルは塔の魔術士に、北の果て半島に行ってはいけない、と説明されていた。
「……時間の歪みが現れてしまっていて、危険なんですよ、あそこは! 時間の歪みが空間の歪みを引き起こしていてですねえ……」
「だから、あたし達はその関係者なんですってば!」
「おい、サミー」
 振り返ると、ライカとルナがいた。
「北の果て半島は、ルファス・トゥーラン両神殿とこの北の塔の命によって、現在立ち入り禁止なんですって」
「そっか……。ならどっちかに説明に行かないとな、って……サミー、お前、何で分かっちまったんだ?」
(あ。バレた……)
「まあいいや。分かったなら、説明する手間も省けるしな。ま、そーゆーことだ」
 あっさりとライカは言った。
「ああ、あなた。この方のお連れの方ですね。今、北の果て半島はですねえ――」
 受付の魔術士の言葉を遮ってライカは言った。
「オレ達は本当に、その歪みと関わりのある者なんですよ。すいませんが近くのルファス神殿とトゥーラン神殿の場所を教えて下さい」
 魔術士は少し考えて、分かりました、と言った。
「神殿はどちらも空ですよ。歪みの観測をしに、歪みのすぐ近くに詰めているはずですから。この北の塔でも人員を裂いてそちらに協力しています。もうすぐ交代の時間で馬車が帰ってくるはずですから、その場所に乗っていって下さい」
「ありがとうございます!」
 ライカは深く頭を下げた。

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