小説

SS・映画館

 黄昏に染まる街を散策していたら、古びた映画館を見つけた。 西日に照らされる看板には今週から公開が始まった最新作に並んで、タイトルだけは聞いたことがあるような往年のSF映画のポスターが並んでいる。「もうじき上映時間ですよ」 看板をしげしげと…

SS・おやつ ~六番街・稲荷社~

 横丁のお稲荷さんに新作菓子を供えると大ヒットするらしい。 そんな噂を信じるわけでもないが、業績が伸び悩んでいる今、神頼みもありかもしれない。「ほう、新作じゃな。どれどれ、うん、美味い!」「……まさか、おやつ欲しさに自分で噂を流したんじゃな…

SS・雲海の燕

 クラウディオ・シティは「雲海に浮かぶ街」だ。正しくは世界そのものが雲海に覆われ、雲の下を知る者はいない。 どこまでも広がる空、そして雲海を漂う大小の浮島。それが世界のすべてであり、人々はそれを疑いもしない。 浮島に暮らす人々の「足」はずば…

SS・紙飛行機 ~九番街・雲海の渚~

 あっ、と声をあげる間もなく、紙飛行機が雲海に沈む。 渡り鳥すら近寄らない、複雑で気紛れな気流。この空を往くのは飛行機の特権だ。「やっぱり紙じゃ無理か」「結局は風頼みだからなあ」 それならばいつか、あの鉄の翼で。 この気難しい空を、自由に飛…