SS・映画館
黄昏に染まる街を散策していたら、古びた映画館を見つけた。 西日に照らされる看板には今週から公開が始まった最新作に並んで、タイトルだけは聞いたことがあるような往年のSF映画のポスターが並んでいる。「もうじき上映時間ですよ」 看板をしげしげと…
垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・対価 ~六番街・若葉荘~
願いを叶える対価は命――と言われるのかと思いきや、悪魔が要求したのは「今晩の寝床と温かい食事」だった。「『対価』は同価値でないとね」「へえ、入稿前日の原稿手伝いってその程度でいいんだ」「うわっ、極悪入稿とか、あんさんの方がよっほど悪魔や。…
垂れ耳エルフと世界樹の街 小説 現代もの
SS・泣き笑い ~六番街・酒屋『玄』~
湿っぽいお別れなんざごめんだ、とさんざん零されたから、その真逆をいってやろうと、その日は朝から宴会を開いた。 あちこちから友人知人が集まって、飲めや歌えの大騒ぎ。思い出話に花を咲かせ、笑いすぎて涙が止まらない。 なあ爺さん。こういう涙なら…
垂れ耳エルフと世界樹の街 小説 現代もの
SS・祭りのあと ~六番街・裏参道~
祭のあとは、いつだって物悲しい。 解体されていく櫓や屋台。潮が引くように薄れゆく賑わい。「寂しいかの?」 誰かが落とした狐のお面を拾い上げ、幼女の姿をした神様は、紅い袖を翻す。「終わりがあるから、また始まるんじゃ。だから――」 また来年、…
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SS・おやつ ~六番街・稲荷社~
横丁のお稲荷さんに新作菓子を供えると大ヒットするらしい。 そんな噂を信じるわけでもないが、業績が伸び悩んでいる今、神頼みもありかもしれない。「ほう、新作じゃな。どれどれ、うん、美味い!」「……まさか、おやつ欲しさに自分で噂を流したんじゃな…
ファンタジー小説 小説 現代もの
SS・坂道 ~六番街・寝返り坂~
学校へと向かう急勾配の坂道は「寝返り坂」と呼ばれている。「こうなると登校っていうより登山だよな」「確かに」 昔から、やけに坂の多い町だとは思っていた。地名にも坂がつくものが多いし、高校名には丘の字が入っている。「なんでこうも坂だらけなのか…
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SS・金木犀 ~六番街・喫茶『三日月』~
オレンジ色の香りがふわりと鼻腔をくすぐる。 周囲を見渡しても、それらしき花は見当たらなくて。 つい探し回っていたら、見事に遅刻してしまった。「それは『幻の金木犀』だね」 ゆめみの町・七不思議の一つだと語るマスター。「……金木犀って元からそ…
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SS・神隠し ~六番街・ゆめみの不動産~
「ガラクタ横丁で迷子?」『そうなんだよ。商店街のみんなで探しちゃいるが、どこにも見当たらない。手を貸してくれ!』 そんな一報を受けて店を飛び出していった道端さんは、数時間後に男の子を連れて戻ってきた。 一体どこに隠れていたのか、二人とも土埃…
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SS・かぼちゃ ~六番街・松和荘~
食堂のテーブルにズラリと並ぶのは、かぼちゃのグラタンにシチュー、煮付けにコロッケ――。「八百屋さんからいただきまして」 松和荘に大量のかぼちゃを持ち込んだ客人は、いやあ助かりましたと頭を掻く。 数日遅れのパーティに、飾りつけのかぼちゃジャ…
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SS・屋上 ~六番街・夢ヶ丘高校~
――ない。やはり、ないのだ。 校舎の屋上から見渡しても、やはりどこにも見当たらない。 あの日、赤い着物の女の子に手を引かれて歩いた、一本道の突き当たり。 路地裏にそびえる古木と、その根本にある古いお稲荷さん。 「またね」の約束を、僕は未だ…
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SS・雲海の燕
クラウディオ・シティは「雲海に浮かぶ街」だ。正しくは世界そのものが雲海に覆われ、雲の下を知る者はいない。 どこまでも広がる空、そして雲海を漂う大小の浮島。それが世界のすべてであり、人々はそれを疑いもしない。 浮島に暮らす人々の「足」はずば…
垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・紙飛行機 ~九番街・雲海の渚~
あっ、と声をあげる間もなく、紙飛行機が雲海に沈む。 渡り鳥すら近寄らない、複雑で気紛れな気流。この空を往くのは飛行機の特権だ。「やっぱり紙じゃ無理か」「結局は風頼みだからなあ」 それならばいつか、あの鉄の翼で。 この気難しい空を、自由に飛…
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