魔法使いの七つ道具 ~見習い魔術士奮闘記~ - 3/7

3.とんがり帽子

てくてくゆらゆら ぱたぱたぴこぴこ
彼女が歩けば帽子が揺れる
帽子が揺れれば飾りが跳ねる
とんがり帽子に金銀月星
ちびっこ魔女の ささやかな自己主張

「あらハル君、こんなところでどうしたんですの?」
あーいや、この『三賢人』の肖像画、おもしろいなーって
「あら、私達のですわね? 私が就任した時に描いていただいたものですから、もう二年以上も経つんですわね~」

塔の玄関にずらりと飾られた、歴代『三賢人』の肖像画
年齢も性別も、種族さえバラバラな彼らの共通点は
黒い長衣に銀の帯 長ったらしい袖には月を模した玉飾り

「この正装、堅苦しくて苦手ですわ~」
同感っすね まだ着たことないけど

「正装」に身を包み いかめしい顔で並ぶ三賢人達
なかでも一際目立っているのが、誰であろうオレのおししょーサマ
――というか、その帽子

「ああ、アルの帽子ですわね?」
そうそう、一人だけとんがり帽子をかぶって、いかにも偉そうにふんぞり返ってるおししょーサマ
そういやこの帽子、客が来た時は必ずかぶってるよな
「あの時は大変でしたわ~。このお気に入りの帽子をどうしてもかぶるんだってごねてごねて……」
「誰がごねたって!?」

振り返れば、廊下の向こうでぴこぴこ揺れるとんがり帽子

「あらアル。今、この肖像画の話をしてたんですのよ」
「ああ、その絵? あの画家はなかなかいい腕してたわよね。わたしのこの美貌を余すことなく写し取って」
肖像画ってのは大体、ニ割増しくらいで描かれるもんなんだけどなー
「何か言った!?」
いや、なんでもないっす
「そう言えば、アルがその帽子をかぶるようになったのは、三賢人に任命されてからですわね」
「いいでしょ、この帽子。こう見えてもれっきとした魔法の品なのよ。背も高く見えるし」
……そっちが主目的だろ
どんだけ深い意味合いがあるのかと思いきや、ただの見栄っ張りかよ
「悪い!? わたしだってね、好きでちっこいわけじゃないんだからねっ!」
あー、はいはい
「この帽子を全世界に広めて、いつか魔術士の定番にするのがわたしの夢なんだから!」
「あら、でもみんながとんがり帽子をかぶったら、ますますアルが小さく見えてしまいません?」
「うっ……盲点だったわ」

おししょーサマ、実は結構ぬけてんだよな
「何か言った!?」
いーえ、なんでも


解説

 魔女のとんがり帽子って、どこら辺から定番になったんでしょうね?
 手持ちの資料を当たってみましたが、帽子の記述はどこにもなくて。
 似たようなものというと、15世紀のフランス宮廷女性の間で流行っていた「エナン」という円錐型の帽子かな。でもエナンにはつばがないし……。
 そもそも、私達の持っている「いかにも」な魔女像は、一体どこから来たものなのか。
 史実(というのもなんか語弊がある気がしますが)に基づいたものもあれば、完全な創作もあるでしょうし、その辺りを突っ込んで調べてみると面白そうですね。
 そしてやっと名前が出てきました、新米魔法使い君(笑) 「ハル」というのは通り名で、本名は貴族らしく長ったらしいです(笑) そして修行を終え、一人前の魔術士となった暁には「魔術士名」が与えられることになりますが、この調子じゃ当分先の話になりそうですね(^_^;)。

サイト初出:2007.02.05