ごちゃまぜ書庫

HIKARI

 町の片隅にぽつんと佇む博物館。 その出口近くのガラスケースには、一台のアンドロイドが展示されている。 天鵞絨の椅子に腰かけ、眠るように瞳を閉じたまま、百年以上の長い月日をここで過ごしてきた、機械仕掛けの少年。 他の展示物には詳細な説明のつ…

〆切天国

登場人物作家:男性(年齢指定なし)天使:主人公を迎えにやってきた天使○病院の一室 一人の作家がベッドに横たわっている。 ベッド脇の小机には書きかけの原稿用紙が置かれている。 己の寿命を悟っている作家は、窓の外を見ながらこれまでの人生を振り返…

クリムゾンゲート

 真っ赤なツンツン頭に青いバンダナ。 茶色の革鎧に身を包み、どこまでもまっすぐな茶色い瞳で。 そいつはいつもこう言うんだ。「行こうぜユート! 冒険の始まりだ」「行こうぜユート! 冒険の始まりだ」 そいつは今日もそう言って、俺の前に現れる。「…

PRAY ~花に願いを~

山の頂に咲く白い花精霊の宿るその花は花びらの数だけ願いを叶えてくれるという…… もうどのくらい歩いただろう。険しい山道を登りながら、投げかける相手のない問いかけを心の中で繰り返す。 鬱蒼とした森。辺りは昼前にもかかわらず薄暗くて、しかも歩い…

勿忘草の伝説 ~Vergissmeinnicht~

 花を摘んであげましょう 愛しいあなたのために 小さな青い花 水辺に咲く 可憐な青い花を あなたが 微笑むのなら 僕は何も 恐れはしない 青い花を 摘んであげましょう 愛しい あなたのために 揺れる水面 手招く水の乙女たち 若者は 小さな花…

FIGHT!

 きっかけは、ほんの些細なコトバ。 たかだか二文字の言葉に、こんなにも打ちのめされている自分が、情けないやら、悔しいやら。 その場はへらへらと笑ってごまかしたものの、電車に乗って、駅に着いて、コンビニで夕食と飲み物を仕入れて、狭いアパートに…

眼鏡

「あっ……」 気づいた時には、もう遅かった。 足の裏から伝わってくる、金属とガラスのひやりとした感触。 そぉっと足を除けると、ブリッジの部分が割れて見事に真っ二つになった、無残な眼鏡が姿を現わす。「あちゃ……」 思わず頭を抱える。昨日、眠気…

こころやさしきもの

 窓の向こうの空が赤く染まっている。 時計が指し示すのは、午後六時過ぎ。 ボクは夕飯の支度をしながら、ボンヤリと外を眺めていた。 古びた平屋建ての一軒家。それがここ、ボクと姉さんの住む場所。両親を一年前に亡くして、天涯孤独になってしまった姉…