ファンタジー小説

ファンタジー作品を集めました!

勇者は眠っている

 勇者――それは世界の危機に応じて召喚され、圧倒的な力で巨悪を討ち滅ぼす者。 嘆き苦しむ人々の前に颯爽と現れて敵を討つ、一騎当千の強者つわもの。 剣を振るえば怪物の群れを薙ぎ倒し、呪文を唱えれば大地をも切り裂く。 人々は勇者の活躍に熱狂し、…

ホンモノの魔法使い

1 一夜限りの夢舞台「紳士淑女の皆々様! 今宵お目に掛けますのは、稀代の術士ロベール・ヴァン=グラードがお贈りする一夜限りの夢舞台。どうぞ最後までお楽しみください!」 朗々と口上を述べれば、割れんばかりの拍手が響き渡る。 街道から外れた辺鄙…

春告鳥

 冷たい風に春の気配が混じる頃になると、人々の話題は《春告鳥》一色となる。「今年はいつ来るのかなあ?」「きっと、もうすぐよ」 待ちきれない様子で暦を睨む幼子をそう宥める母親も、日に何度も窓の外を窺っては、春の使者の到来を待ち侘びる。 穏やか…

最後の伝令

 勝利の報せがもたらされたのは、夏の足音が迫る六の月十四日のことだった。 気の早い者が「ラルス殿下万歳!」と叫び、いつしかそれが「陛下」に代わって、波紋のように広がっていく。「やれやれ、気の早いこって」 天幕の中まで響いてくる喝采に苦笑を漏…

手紙

 それは、初雪も間近と囁かれる、ある日のこと。 村の入り口に植えられた樅木の根元に、ザックは今日も座り込んでいました。 ザックは、夏が終わる頃にこの村へやってきた、八歳の男の子です。 小さい頃に両親を亡くしたザックは、おじいさんと二人で暮ら…

魔法使いの七つ道具 ~見習い魔術士奮闘記~

1.大釜ぐつぐつ もくもく 魔女の大釜秘伝の薬の材料はなぁに?とかげのしっぽに バラの花芥子の実 グミの実 トンボの目玉隠し味には 赤子の涙通された部屋のど真ん中で煮え立っていたのは、大人用の風呂になりそうな大釜目に染みる湯気と鼻が曲がりそ…

登場人物紹介

ライラ・ロジーナ…北大陸アイシャスの北部にある小国「ライラ国」の王女。透けるような白い肌を讃えて《白亜の姫》と呼ばれることも。 後に父の後を継ぎ、二十代で女王に即位。ライラ七世を名乗る。徹底した合理主義と隙のない政治手腕から《氷雪の女王》《…

青息吐息

 感情が目に見えたなら、きっと気持ちも伝わりやすいだろうに。 うっかりそんなことを口にしてしまったのがマズかった。「それは名案ね!」 俄然張り切ってしまったお師匠様が、『北の塔』一の凝り性と名高い『極光の魔女』に話を持ちかけたところで、もう…

黒衣の理由

 魔術士は黒衣、と決めつけられがちだが、実際のところ「魔術士の服は黒」などという決まりはない。 実際、《塔》に集う魔術士達はみな好きな色の長衣を着ているし、魔術士然とした長衣すら嫌がって、普段着で研究に励んでいる者もいる。「そういや、ししょ…

残光

 夕日が沈む頃になって、ようやく『私』は目を覚ます。 角灯の中で大きく伸びをし、夕焼けを浴びて真っ赤に染まる相棒の髪にうっとりと目を細める。『今日はいい天気だったわね。おかげでたっぷり力を溜め込めたわ』「そいつは上々。今夜はお前さんだけが頼…