SS・缶詰 ~七番街・街角~
『思い出』の缶詰をもらった。 振っても何の音もしない。ジョークグッズだろうなと苦笑しつつ、缶切りを取り出す。 ぷしゅ、と気の抜けた音と主に缶から溢れ出す、夕暮れ時の匂い。ひび割れた夕焼け小焼け。「また明日」と朗らかに告げる声。 果たせなか…
垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・クリーニング屋 ~七番街・ハートクリーニング~
消えない汚れは専門家にお任せさ。 食べこぼしたケチャップの染み、シャツのポケットに染み出たインク、部活でドロドロになったユニフォーム。それからほら、働き過ぎで擦り切れたあんたの心も、まるっと洗濯してあげよう。 からっと乾くまで、毛布に包ま…
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SS・流星群 ~七番街・星降る丘~
流星群の夜は大忙しだ。 防寒具を着込み。星取り網と星籠を手に丘を目指す。 灯りを消してじっと目を凝らせば、やがて夜空に流れる小さな星々。 えいやと網を振れば、シャランと軽やかな音。 籠一杯集めたら、瓶詰めにして冷暗所へ。 紅茶に入れると甘…
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SS・水中花 ~七番街・博物館~
その花は、巨大な琥珀の中で時を止めていた。 数千年前の姿そのままに咲き誇る花。完璧すぎる姿に、作り物ではないかという疑惑も出ているようだ。「造花を使えば造作もないことですがね」 昔そんな工芸品がありましたっけね、と笑う学芸員は、どう見ても…
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SS・引き潮 ~七番街・思い出の浜~
『眠れないほど悩んだ時は、引き潮の朝を待て』 おばあちゃんに教わったおまじない。まさか実際にやることになるとは思っていなかったけれど。「ええと、砂浜の小さな穴を掘って――」 これ、潮干狩りだ。 そう気づいた時には、何を思い悩んでいたのか忘れ…
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SS・不思議な額縁
不思議な額縁を手に入れた。 普段はつるんとした無垢のフレームだが、中に絵画をセットすると、その作品に合った柄が浮かび上がるのだ。 木漏れ日の森を描いた水彩画を入れれば、木の実を探す栗鼠の姿に。 果物の盛り合わせが描かれた静物画を入れれば、…
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SS・淑女の微笑み
不思議な絵画を手に入れた。 題名は『淑女の微笑み』。しかし描かれた淑女は紅唇を固く閉じ、悲しげにこちらを見つめて来る。 これのどこが『微笑み』なのだろうか――という疑問は、数日後に氷解した。「すみません、手違いで別の画廊に届けてしまいまし…
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SS・映画館
黄昏に染まる街を散策していたら、古びた映画館を見つけた。 西日に照らされる看板には今週から公開が始まった最新作に並んで、タイトルだけは聞いたことがあるような往年のSF映画のポスターが並んでいる。「もうじき上映時間ですよ」 看板をしげしげと…
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SS・対価 ~六番街・若葉荘~
願いを叶える対価は命――と言われるのかと思いきや、悪魔が要求したのは「今晩の寝床と温かい食事」だった。「『対価』は同価値でないとね」「へえ、入稿前日の原稿手伝いってその程度でいいんだ」「うわっ、極悪入稿とか、あんさんの方がよっほど悪魔や。…
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SS・泣き笑い ~六番街・酒屋『玄』~
湿っぽいお別れなんざごめんだ、とさんざん零されたから、その真逆をいってやろうと、その日は朝から宴会を開いた。 あちこちから友人知人が集まって、飲めや歌えの大騒ぎ。思い出話に花を咲かせ、笑いすぎて涙が止まらない。 なあ爺さん。こういう涙なら…
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SS・祭りのあと ~六番街・裏参道~
祭のあとは、いつだって物悲しい。 解体されていく櫓や屋台。潮が引くように薄れゆく賑わい。「寂しいかの?」 誰かが落とした狐のお面を拾い上げ、幼女の姿をした神様は、紅い袖を翻す。「終わりがあるから、また始まるんじゃ。だから――」 また来年、…
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SS・おやつ ~六番街・稲荷社~
横丁のお稲荷さんに新作菓子を供えると大ヒットするらしい。 そんな噂を信じるわけでもないが、業績が伸び悩んでいる今、神頼みもありかもしれない。「ほう、新作じゃな。どれどれ、うん、美味い!」「……まさか、おやつ欲しさに自分で噂を流したんじゃな…
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