SS・坂道 ~六番街・寝返り坂~
学校へと向かう急勾配の坂道は「寝返り坂」と呼ばれている。「こうなると登校っていうより登山だよな」「確かに」 昔から、やけに坂の多い町だとは思っていた。地名にも坂がつくものが多いし、高校名には丘の字が入っている。「なんでこうも坂だらけなのか…
垂れ耳エルフと世界樹の街 小説 現代もの
SS・金木犀 ~六番街・喫茶『三日月』~
オレンジ色の香りがふわりと鼻腔をくすぐる。 周囲を見渡しても、それらしき花は見当たらなくて。 つい探し回っていたら、見事に遅刻してしまった。「それは『幻の金木犀』だね」 ゆめみの町・七不思議の一つだと語るマスター。「……金木犀って元からそ…
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SS・神隠し ~六番街・ゆめみの不動産~
「ガラクタ横丁で迷子?」『そうなんだよ。商店街のみんなで探しちゃいるが、どこにも見当たらない。手を貸してくれ!』 そんな一報を受けて店を飛び出していった道端さんは、数時間後に男の子を連れて戻ってきた。 一体どこに隠れていたのか、二人とも土埃…
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SS・かぼちゃ ~六番街・松和荘~
食堂のテーブルにズラリと並ぶのは、かぼちゃのグラタンにシチュー、煮付けにコロッケ――。「八百屋さんからいただきまして」 松和荘に大量のかぼちゃを持ち込んだ客人は、いやあ助かりましたと頭を掻く。 数日遅れのパーティに、飾りつけのかぼちゃジャ…
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SS・屋上 ~六番街・夢ヶ丘高校~
――ない。やはり、ないのだ。 校舎の屋上から見渡しても、やはりどこにも見当たらない。 あの日、赤い着物の女の子に手を引かれて歩いた、一本道の突き当たり。 路地裏にそびえる古木と、その根本にある古いお稲荷さん。 「またね」の約束を、僕は未だ…
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SS・雲海の燕
クラウディオ・シティは「雲海に浮かぶ街」だ。正しくは世界そのものが雲海に覆われ、雲の下を知る者はいない。 どこまでも広がる空、そして雲海を漂う大小の浮島。それが世界のすべてであり、人々はそれを疑いもしない。 浮島に暮らす人々の「足」はずば…
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SS・紙飛行機 ~九番街・雲海の渚~
あっ、と声をあげる間もなく、紙飛行機が雲海に沈む。 渡り鳥すら近寄らない、複雑で気紛れな気流。この空を往くのは飛行機の特権だ。「やっぱり紙じゃ無理か」「結局は風頼みだからなあ」 それならばいつか、あの鉄の翼で。 この気難しい空を、自由に飛…
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SS・地下一階 ~十番街・立入禁止地域~
崩れかけた階段を下りた先、立入禁止の地下一階には、旧文明のお宝が眠っているはずだった。 暗い通路を進み、幾つもの扉を潜り抜け――どこまで進んでも、無機質な空間のみ。 諦めかけた次の瞬間、通路の先に見えたのは、非常灯の下で咲く本物の『花』。…
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SS・ステッキ ~五番街郊外・北の塔~
魔法使いの杖は、単なる補助なのだそうだ。「要するに集中するための道具なんだから、自分がこれだ、と思うものなら何でもいいのよ」 例えばほら、と懐から取り出したのは、事もあろうにステッキ型の飴細工。「えいっ!」 ひらりと振れば、飴の雨が降って…
ファンタジー小説 垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・月虹 ~五番街近郊・月虹峠~
依頼品の『虹水晶』を探し続けて数ヶ月。「月虹の根元を探すこった」 腕利きの鉱夫に教えられ、月虹がよく目撃される場所を探した。 虹の根元と思しき場所を掘り返して、なるほど、と膝を打つ。 地中からすう、と夜空に放たれる、色のない光。「月虹を生…
ファンタジー小説 垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・旬 ~五番街・菓子店《オ・ルカ》~
世界樹の街は街区ごとに季節が異なる。それはつまり、時期を見計らえば、異なる旬の食材をいっぺんに味わうことすら可能というわけだ。「だからって南瓜カボチャと西瓜すいかのケーキはどうなんだ」「夏と秋を同時に楽しめると思ったんだけどねえ」 旬が過…
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SS・うろこ雲 ~五番街・北端の丘~
空に浮かぶうろこ雲は、竜が通過したあとだという。 この時期になると各地の竜が一所に集まって、山の上で秘密の会合を行うのだ。 うろこ雲が出て数日後に必ず雨が降るのは、人目を避けるためらしい。「聞かれて困るような話なのかな?」「お見合いでもし…
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