SS・百年の刹那・風にとける花
はらはらと舞う薄紅色の花びら。遥か頭上から降り注ぐそれは、地上に降り積もる頃には色と重みを失って、やがて風に攫われて消えていく。 予告なく咲き、風にとける花。百年に一度、数時間しか咲かないという奇跡の花は、散り際まで神秘的だ。「なんだかも…
SS ファンタジー小説 垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・百年の刹那・幻の花
百年に一度、世界樹が薄紅色に染まる。 夜明けと共に咲き、小一時間で散ってしまう『幻の花』。『ああ、懐かしい景色だ。故郷を思い出す』 かつてこの光景を共に眺めた異郷の剣士は、そう呟いて涙を零した。 彼が教えてくれた花の名は、もう思い出せない…
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SS・百年の刹那
「おはよー」 夜明け前の来客はあまりにも意外な人物だったから、眠気が一気に吹き飛んだ。「おっさん、なんでここに!?」 黎明の空を背に佇むのは《垂れ耳エルフ》のユージーン。いいから、と問答無用で連れて行かれたのは、彼が営む骨董店の裏――世界樹…
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SS・星粒リーフパイ・燐光
夕食後、紅茶に添えられた小さなパイに、おや、と目を細める店主。「どうしたの、これ」「パン屋さんの新作だそうです」「へえ、美味しそうだね」 意外にも甘いものに目がない店主は、嬉々としてパイに齧りつき――。「ユージーン! 体が光っているのです…
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SS・星粒リーフパイ
――お菓子か 悪戯か―― 祭の夜、街中に現れる『悪戯妖精』達をもてなすべく、大人達は菓子の調達に忙しい。「こちらはパン屋さんではありませんでしたか?」 小首を傾げる銀髪の少女に、髭の店主は豪快な笑い声を上げた。「普段はな。祭の前は菓子屋に…
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SS・缶詰 ~七番街・街角~
『思い出』の缶詰をもらった。 振っても何の音もしない。ジョークグッズだろうなと苦笑しつつ、缶切りを取り出す。 ぷしゅ、と気の抜けた音と主に缶から溢れ出す、夕暮れ時の匂い。ひび割れた夕焼け小焼け。「また明日」と朗らかに告げる声。 果たせなか…
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SS・クリーニング屋 ~七番街・ハートクリーニング~
消えない汚れは専門家にお任せさ。 食べこぼしたケチャップの染み、シャツのポケットに染み出たインク、部活でドロドロになったユニフォーム。それからほら、働き過ぎで擦り切れたあんたの心も、まるっと洗濯してあげよう。 からっと乾くまで、毛布に包ま…
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SS・流星群 ~七番街・星降る丘~
流星群の夜は大忙しだ。 防寒具を着込み。星取り網と星籠を手に丘を目指す。 灯りを消してじっと目を凝らせば、やがて夜空に流れる小さな星々。 えいやと網を振れば、シャランと軽やかな音。 籠一杯集めたら、瓶詰めにして冷暗所へ。 紅茶に入れると甘…
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SS・水中花 ~七番街・博物館~
その花は、巨大な琥珀の中で時を止めていた。 数千年前の姿そのままに咲き誇る花。完璧すぎる姿に、作り物ではないかという疑惑も出ているようだ。「造花を使えば造作もないことですがね」 昔そんな工芸品がありましたっけね、と笑う学芸員は、どう見ても…
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SS・引き潮 ~七番街・思い出の浜~
『眠れないほど悩んだ時は、引き潮の朝を待て』 おばあちゃんに教わったおまじない。まさか実際にやることになるとは思っていなかったけれど。「ええと、砂浜の小さな穴を掘って――」 これ、潮干狩りだ。 そう気づいた時には、何を思い悩んでいたのか忘れ…
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SS・不思議な額縁
不思議な額縁を手に入れた。 普段はつるんとした無垢のフレームだが、中に絵画をセットすると、その作品に合った柄が浮かび上がるのだ。 木漏れ日の森を描いた水彩画を入れれば、木の実を探す栗鼠の姿に。 果物の盛り合わせが描かれた静物画を入れれば、…
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SS・淑女の微笑み
不思議な絵画を手に入れた。 題名は『淑女の微笑み』。しかし描かれた淑女は紅唇を固く閉じ、悲しげにこちらを見つめて来る。 これのどこが『微笑み』なのだろうか――という疑問は、数日後に氷解した。「すみません、手違いで別の画廊に届けてしまいまし…
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